ジルコニアについて
- 歯科で使われるジルコニアとは、どのような材料ですか?
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ジルコニアは二酸化ジルコニウムを主体とする多結晶セラミックです。材料学的には「セラミックの一種」ですが、ガラスセラミックとは構造も接着方法も大きく異なります。
さらに「ジルコニア」と一言で呼んでも一種類ではありません。イットリア量などによって結晶組成が異なり、強度を重視した3Y系から透明感を高めた5Y系などがあります。
Kwonら(2018)が特定製品を比較した実験では、曲げ強さは3Y系約1194MPa、5Y系約688MPaでした。5Y系は透明性が改善する一方、従来型3Y系ほどの強度はありませんでした。
つまり患者さんに「ジルコニアを使います」と説明するだけでは本当は不十分で、どの性質のジルコニアを、どの部位に使用するのかまで考える必要があります。
奥歯のジルコニアについて
- 強く噛む奥歯にもジルコニアは使用できますか?
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はジルコニアは奥歯に適した材料の一つですが、理由は単に「硬いから」ではありません。
奥歯では前歯より大きな咬合力が加わります。そのため材料の曲げ強さだけでなく、修復物の厚み、咬合接触の位置、残存歯質、歯ぎしり・食いしばりなどを考える必要があります。
また、高透光性ジルコニアは審美性が向上する一方、従来型3Y系より強度が低いものがあります。
したがって「奥歯だからジルコニア」で終わるのではなく、その奥歯にどのジルコニアを使うのかが重要になります。
特に強い咬合力が予想される症例では、審美性だけを優先して材料を選ぶのではなく、機械的性質まで確認する必要があります。
前歯のジルコニアについて
- ジルコニアは前歯にも使用できますか?
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現在のジルコニアは前歯にも使用できます。ただし、前歯では強度だけを見て材料を選ぶことはできません。
従来型のジルコニアは白く不透明になりやすいという欠点がありました。高透光性ジルコニアではこの点が改善されていますが、透明性を高めるために結晶組成を変えると、機械的強度とのトレードオフが生じます。Kwonらの研究でも、高透光性5Y系は従来型3Y系より透明性が高い一方、曲げ強さは低くなっています。
前歯ではさらに、支台歯の色も重要です。透明感の高い材料ほど、変色した支台歯や金属コアの色を拾うことがあります。
そのため、周囲の天然歯、支台歯の色、必要な遮蔽性、透明感、強度を全部見て材料を選ぶ必要があります。
ジルコニアとセラミックの選び方について
- ジルコニアとセラミックは、どちらを選べばよいですか?
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ガラスセラミックとジルコニアには、強度や透明感だけでなく、接着の理論そのものにも違いがあります。
ガラスセラミックはフッ酸処理とシラン処理を利用できますが、ジルコニアはガラス相をほとんど持たないため同じ方法は使えません。
Koizumiら(2012)はジルコニアへのレジンセメントの接着を調べ、MDPを含むプライマーやレジンセメントを使用した群で、熱サイクル後の接着強さが良好だったと報告しています。
つまり材料選択では、単に完成した歯の「硬さ・白さ」だけを見るのではなく、その歯にどれだけ接着できる歯質が残っているかも判断材料になります。
これが、歯科材料を「商品名」で選ぶのではなく、症例ごとに選ばなければならない理由の一つです。
ジルコニアの耐久性について
- ジルコニアは絶対に割れないのでしょうか?
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ジルコニアは非常に強度の高い材料ですが、「絶対に割れない」という材料はありません。
破折は材料の強度だけではなく、修復物の厚み、ブリッジなら連結部の断面積、咬合接触、歯ぎしり・食いしばり、調整時に生じた表面欠陥など複数の条件が重なって起こります。
さらに、すべてのジルコニアが同じ強度ではありません。Kwonらの実験では3Y系と5Y系だけでも曲げ強さに大きな差が認められています。
ですから「ジルコニアにすれば割れない」という説明はしません。
**必要な強度を持つ種類のジルコニアを、必要な厚み・形態で使い、噛み合わせまで管理する。**そこまで含めて初めてジルコニアの強度を生かせます。
ジルコニアの変色について
- ジルコニアは長期間使用すると変色しますか?
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ジルコニアは比較的色調安定性の高い材料ですが、長期間の見た目を考えると、材料そのものだけを見てはいけません。
実際の口腔内では、天然歯は加齢によって色が変わります。歯肉退縮が起こればマージンの見え方も変わりますし、ステインやグレーズなど表面処理の状態も外観に影響します。
ですから「ジルコニアそのものは変色しにくい」という説明と、「何年経っても口元全体が同じ色に見える」という説明は別です。
長期的な審美性は、ジルコニアの色調安定性+天然歯の変化+歯肉の変化+表面仕上げを合わせて考える必要があります。
ジルコニアの硬さについて
- ジルコニアは硬すぎて反対側の歯を傷めませんか?
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ここはジルコニアで非常に重要なところです。
「ジルコニアは硬いから反対の歯を削る」と単純に説明されることがありますが、実際には硬さだけでなく表面粗さが非常に重要です。
Chongら(2015)は、ジルコニアを研磨した状態、グレーズした状態、ダイヤモンドポイントで調整した状態、調整後に再研磨した状態などで対合エナメルの摩耗を比較しました。臨床的に調整したままのジルコニアより、調整後に再研磨したジルコニアの方が対合歯の摩耗が有意に少ないという結果でした。
さらに実際の患者を対象とした無作為化臨床研究でも、研磨されたモノリシックジルコニアの対合エナメル摩耗は、1年間では天然歯同士やメタルセラミックと有意差が認められませんでした。
つまり臨床的に重要なのは、
「ジルコニアは硬いから危険」ではなく、咬合調整後に表面をどこまで滑沢に戻すか
です。
これは材料選択以上に、装着時の処置が重要になる部分です。材料 ビッカース硬さの目安 天然エナメル質 約 270~420 HV PICN系材料 約 200~300 HV前後 リチウムジシリケート 約 580~730 HV 3Yジルコニア 約 1,300~1,600 HV
銀歯からジルコニアへの交換について
- 現在入っている銀歯をジルコニアに替えることはできますか?
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銀歯からジルコニアへ変更できる症例は多くありますが、これも単なる色の変更ではありません。
銀歯を外した後に、二次う蝕、亀裂、残存歯質、支台歯の高さ、マージン、咬合などを改めて確認します。
さらにジルコニアはガラスセラミックとは接着方法が異なります。Koizumiらの研究では、MDPを含むプライマーやセメントを用いることでジルコニアへの接着耐久性が改善しました。
したがって銀歯からジルコニアへの交換は、
「銀歯を白くする治療」ではなく、古い修復物を外して歯を再評価し、ジルコニアに適した形成・接着・咬合を作り直す治療
と考えた方が正確です。
監修者
関口 沙季
Ha-Milデンタルクリニック盛岡 院長
口腔外科認定医
経歴
岩手医科大学歯学部 卒業
昭和大学歯学部 臨床研修修了
昭和大学歯学部 顎顔面口腔外科 入局
歯科麻酔科・インプラント科 研修
昭和大学歯学部 顎顔面口腔外科 非常勤
所属学会・資格
日本口腔外科学会
口腔外科認定医
日本口腔顎顔面インプラント学会
日本顎変形症学会
ブルーラジカル認定医
